■cwf4×4(堆                                                    

…………………bW
 


                                                          ■357.cwf4×4(堆/120304/洲本市



もうすぐ春もやってこようかという、のどかな山里でおこった、恐怖の出来事である。
この写真撮影は、私(近野)ではなく、匿名希望の投稿者によりおこなわれたものだ。
当HPに従前から興味をもたれているという方で、おそらく事故現場のご近所にお住まいなのだろう。
そもそも農民車自体が、古くなると周囲の情景に溶け込みやすい外観になるので、こうして
斜めになって溝に半分かくれていると、ますますわかりにくいが、とにかく
脱輪して用水路に落っこちたのだ。

現場は、撮影位置が高い坂道である。状況はよくわからないが、何らかの理由で
後退しはじめた農民車を操作できなくなって落ちたようだ。
こういう場合、

@ギヤ操作に失敗してニュートラル状態のまま後退した
Aブレーキ故障による制動不能
Bエンストして、再始動時にクラッチを繋ぎ損ねて後退した
C後進しようとした時の操作ミス

などがあり、またこれらが複合した原因もありうる。
乗用車でもこうした事故は当然おきるのだが、この農民車の場合、荷台には巨大な
堆肥散布機が載っており、車体自体が重く、かつ重心が高い。後方視界も不良なのが弱点ではある。
おまけに、お世辞にも整備が良好とはいえない様子なので、ブレーキの効きも悪かったのでは
ないだろうか。車検制度のかからない農民車では、運転者の点検整備が大前提だ。
それに事故車はナンバーもついていないようなので、保険は運転者自身の保険以外はない。
深い溝からの引き揚げも自己負担だ。
もっとも、話によると運転者に怪我がなかったそうで、不幸中の幸いではある。





                                                                          ■358.





話は農民車のことに移す。
事故のおかげというと不謹慎ではあるが、農民車の底部が白日のもとで観察できる機会はそうそうない。
車体前部の裏側には、複雑で頑丈な車のメカニズムがギッチリと詰まっている。
エンジンのオイルパン。ハンドルのリンクと倍力装置。そこにオイルを流す耐圧耐油のホース。板バネと、その間に見える農民車特有の
動力伝達・ベルトプーリー。前輪走向ロッドとデフケース、クラッチ版とミッションケース、
さらに後輪に向かうプロペラシャフトと、上部の散布装置に動力を伝えるチェーン歯車にもエンジン動力は
分岐していく。その脇にはこれらにエネルギーをもたらす燃料タンクも見える。
反対側には排気管が通る。車輪の間と最低地上高のごく限られた空間には、車を動かすための
重要な機構が苦心惨憺のうえ組み合わさって詰め込まれているのだ。






                                                               ■359.



こちらは後方から。
どうやら堆肥も積んでいたようだ。
ものの見事に落ちているが、運転席もかなり向こう岸の土手に接地している。
これで運転者に被害がなかったのは奇跡だが、あるいは運転者が離れているときに
ひとりでに動き出したのかもしれない。すぐ横にある配水管は、後輪があたったのか
折れてしまっている。こいつも治さなければならない。
この狭い山道に、この農民車を引き揚げることのできるユニックを、はたして持ってこれるだろうか。





                                                                ■360.



私も、かつて農民車が用水路におっこちた現場に遭遇したことがある。
堆肥散布車ではなかったが、アルミ製のアオリが高い堆肥運搬に特化した感じの
農民車だった。事故は下りの急角度な曲がりで、しかも用水路の短い橋を渡る
現場であった。そこは草刈りが不十分で、どこが道の端っこかがわかりにくい。前輪は
かわった(淡路弁。タイヤが角を越えたという意)が、後輪が内輪差のためにもろに落ち、
車体まで転覆したという事故だ。
しかも悪いことに運転者は頭から流血していたと、近くにいたご婦人が話されていた。

繰り返すが、農民車は重心が高い。とくに堆肥散布車などは
耕作地に入るために、接地圧の低い大きなタイヤを装備する。ゆえに車高が一段と高くなり、
くわえて高い荷台には巨大で重い散布機が大量の堆肥を積んでいる。
全体が重くなれば、それを動かすエンジンも強力になり、また重さを増す……。
普通の乗用車ならば、後輪の片方が脱輪するでだけですむものを、
こうしてもろに転覆転落してしまうはめになる。
恐ろしいことだ。
農民車は便利な機械だが、恐ろしいものなのだ。

貴重な写真を提供してくださった匿名様に、感謝いたします。

 

 

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